ヘルシーライフ
今月の健康「秋のアレルゲン一掃作戦」
体の免疫機能が過剰に反応することで起こるアレルギー。その原因となるアレルゲンは金属や食物などさまざまです。アレルゲンのひとつで家の中に多く見られるハウスダストは、一年のうちで高温多湿な夏・秋(7~9月)に最も増え、特に9月は夏に増殖したダニのフンや死骸が多くなります。これらのアレルギー対策に有効なのが、掃除による環境整備です。現在アレルギーを持っていない人も、アレルゲンを遠ざけることは今後の発症の予防になります。健康な毎日のためにも、今月は掃除を見直してみましょう。
①ほこりが「落ち着く」タイミングで
掃除の正しいタイミングはいつかご存じですか? ほこりは人が少し動くだけで舞い上がってしまいます。掃除を効率的に行うには、ほこりが浮遊しているときよりも、舞い上がったほこりが落ちきって落ち着いたとき。朝起きてすぐや帰宅直後など、部屋に人の動きがなくなってしばらくしてから掃除するようにしましょう。
②高いところから順番に
基本中の基本ですが、掃除は高いところから低いところへ順番にしましょう。床ばかりを意識していると部屋の上部のほこりが除けず、知らず知らずの間にほこりだらけに。掃除は高いところの拭き掃除からが鉄則です。
③床掃除、いきなり掃除機はNG
掃除を始めるとき、はじめに掃除機をかけると、排気で部屋中のほこりがたちまち舞い上がります。床の掃除は拭き掃除から始めましょう。雑巾で水拭きの必要はなく、市販の付け替え式のモップやワイパーでOKです。畳の場合は畳の目に沿ってモップをかけましょう。
④換気で空気の流れを作る
掃除機をかけるときは、必ず換気しましょう。掃除中は想像以上にほこりが舞うため、閉め切った室内では掃除後のほうが空気中のほこりが増えることも。2ヵ所以上窓を開けて空気の通り道を作るのが理想的です。どうしても窓を開けられない場合は、換気扇や空気清浄機を強運転にしましょう。
⑤掃除機の排気も要注意
意外と見落とされがちなのが、ゴミの溜まった掃除機の紙パック。ゴミが溜まったままの状態だと、紙パックの中のほこりが排気としてまかれてしまうことも。二重になっている紙パックやサイクロン式掃除機を利用するのも手です。
●ハウスダスト
アレルゲンの混合したもの。実態はダニやそのフン、死骸がほとんど。
●皮屑(ひせつ)
フケのこと。特にイヌ、ネコなどのペットのフケ。
●花粉
スギやイネ科、キク科などの花粉。服や体に付着して屋内に侵入。
●カビ
空気中に飛散したものを吸い込むことでアレルギーの原因に。
家の中にはアレルギーの原因になる物質や生物がたくさん。健康で快適な毎日を維持するために、隅々に潜むアレルゲンを逃さない掃除のコツをご紹介します。
寝具はダニの絶好のすみかです。長時間過ごす場所でもあるので、寝具の手入れは欠かせません。
●布団干しはこまめに両面を
ダニは湿度が大好き。布団はできるだけこまめに外に干して乾燥させましょう。裏表まんべんなく干すのがポイントです。ダニは高温に弱く、黒い布や布団干しカバーをかけたりするとより効果的です。布団をバンバン叩くと、ダニやその死骸が粉砕されて吸い込みやすくなる場合があるので、表面を軽く払う程度にしましょう。
●寝具掃除の仕上げは掃除機で
日光で干すだけではダニ対策は不十分。掃除機を使って寝具のダニやそのフン、死骸を取り除きましょう。掃除機に布団用のノズルを付けて、50cm幅を20秒程度かけて往復吸引すると効果的です。週に1回程度は行うように心がけましょう。
●布団乾燥機でダニ退治
なかなか布団が干せない梅雨や花粉症が気になる時期、お勤めなどで日中家にいない人は布団乾燥機を利用するのもおすすめです。干したり取り込む際のほこりが気にならないというのも布団乾燥機を利用するメリットのひとつです。
●押入れ、クローゼットはなるべく開放
押入れやクローゼットは湿気がこもりがちになります。天気の良い日などは開放して換気するようにしましょう。また、布団の上げ下ろしのときには大量のほこりが舞うので、窓を開けて行うことを忘れずに。
●ダニ対策の強い味方防ダニ寝具
高密度の繊維で細かく織られ、ダニやほこりなど、アレルゲンの出入りをシャットアウトする防ダニ寝具は、ダニ対策に効果の高い商品です。アレルギー専門医などが薦める、研究・実験で効果が実証されているものが安心です。
リビングには、ほこりやダニが溜まりやすい場所やものがたくさん。普段意識しないところもチェックしましょう。
●棚や机、床と平行な場所をチェック
棚や机の上、カーテンレール、照明の笠の上、テレビやパソコンの上など、「床と平行な場所」は床と同じだけほこりが溜まっています。部屋の高いところのほこりも、ハンディモップなどを使えば拭きとれます。月に1回を目安に掃除を心がけましょう。
●床はフローリングがおすすめ
床の掃除機がけは毎日行うと、アレルギー対策に効果的です。絨毯やラグ、畳はダニが繁殖しやすいのに対して、フローリングはダニが繁殖しにくい上に、掃除もしやすい利点があります。絨毯やラグには布団と同様に50cm幅を20秒程度かけてじっくり掃除機をかけましょう。
●ソファーは革張り、ビニール製のものを
布製のソファーは革張りのものやビニール製に比べてダニの温床になりやすいので注意しましょう。布製のものを使っている場合は掃除機がけを念入りに行うことが大切です。革やビニール製のソファーにもほこりは溜まるので、こまめにから拭きをするとよいでしょう。
●ぬいぐるみはときどき洗濯を
ソファー同様、ぬいぐるみもほこりやダニが溜まりやすいものです。子どもはぬいぐるみを口に入れたりするので、こまめに洗濯しましょう。できれば水洗いできるものを選び、洗濯後はよく乾燥させます。乾燥が不十分だとダニやカビがかえって繁殖してしまいます。
カビはダニよりもアレルギー症状が重症化しやすく、ある意味でより有害な物質です。湿度に気を配って環境を整えましょう。
●カビ対策の適正湿度
カビは室温20~25℃、湿度65%以上で増えるので、湿度は65%以下、できれば50%以下を保ちましょう。梅雨どきや雨の日などは除湿器を使うのもひとつの手です。
●水を使ったら“ついで掃除”
浴室、洗面所は使ったついでに掃除しましょう。浴室はその日最後に入った人が浴槽や壁を洗い、窓や壁を軽く拭き、換気します。体を拭いたあとのバスタオルで拭き取ってもよいでしょう。洗面所は小さなスポンジやブラシを近くに置いておき、使ったついでに気になった汚れを洗いましょう。
●ちょっと意外なカビの元
エアコンの空気フィルターや加湿器はカビが発生しやすく、油断しているとカビをまき散らすことにも。空気フィルターは週に1回程度掃除機で吸引し、ときどき水洗い。加湿器は取扱説明書などに応じた、こまめな手入れが必須です。
掃除以外の部分でも、日常生活で注意しておきたいアレルギー対策をご紹介します。
●ペットがアレルゲンになることも
ペット、特にネコの毛やフケがアレルゲンになり、強いアレルギー症状を引き起こす人がいます。また、それらを飼うことでダニの繁殖を招くことも。一番の対策は飼わないことですが、飼う場合は、週に1度は洗う、飼育範囲を制限する、排せつ物の処理に気を配るなど、最低限の対策をしましょう。
●室内の植物にも注意が必要
観葉植物が、カビなどのアレルゲンを発生させる原因になることがあります。土はカビが発生しやすく、また、水やりをすることで室内の湿度が上がり、壁などにカビが発生しやすくなります。アレルギーが気になる方は、室内には植物を置かずに外で育てるほうがよいでしょう。
●知っておきたい「食品のアレルギー表示」
食べ物が原因でアレルギー症状が起こることもあり、原因となる原材料はほとんどの加工食品に表示されています。ただし対面販売されるものや商品表示面積の小さな容器包装に入った加工食品は、表示が省略されることもあるので、食物アレルギーを持つ人は食品に十分に注意しましょう。
<取材協力>
東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科 准教授 勝沼俊雄先生
<参考文献>
『誰でもスグできる! 小児ぜんそくの悩みをみるみる解消する 200%の基本ワザ』(勝沼俊雄著/日東書院)
『アレルギーを撃退する「おそうじ」マニュアル』(池谷優子著/マキノ出版)
『アトピー・ぜんそく・花粉症 アレルギーは自分で治そう』(稲垣護著/現代書林)
(Webサイト)
『食品表示』(消費者庁)(アレルギー相談センター immune.jp)
<イラストレーション>
山口絵美